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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)4134号 判決 1964年6月29日

原告 株式会社成進商会

被告 株式会社大和組

主文

被告は原告に対し金四八〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年四月二一日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決はかりに執行することができる。

事実および理由

原告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一  被告は訴外米山工業株式会社にあてて、金額金四八〇、〇〇〇円、満期昭和三九年四月二〇日、支払地および振出地東京都港区、支払場所株式会社三井銀行日比谷支店、振出日昭和三八年一二月二〇日の約束手形一通を振出した。

二  右約束手形の裏面の記載は、第一裏書人米山工業株式会社、同被裏書人株式会社常磐相互銀行(抹消)、第二裏書人朱趙敏、同被裏書人白地、第三裏書人株式会社成進商会(原告)であつて、原告は現にその所待人である。

三  原告は右手形をその満期に支払場所に支払のために呈示したが、その支払を拒絶された。

そこで、原告は被告に対し右手形金四八〇、〇〇〇円およびこれに対するその満期後である昭和三九年四月二一日から完済まで手形法所定の年六分の割合による利息金の支払を求める。

と述べなお、

本件手形は裏書の連続を欠くものではない。原告は本件手形の正当な権利者である。

と述べた。

被告訴訟代理人は、被告あての適式な呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しなかつたが、その述べたものとみなされた答弁書の記載によれば、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、答弁として、

一  請求原因事実一は認める。

二  同事実二のうち本件手形の裏書が連続していることは否認する。

三  同事実三は認める。

と謂い、なお、

本件約束手形の第一裏書は、もと記名式裏書であるが、被裏書人常磐相互銀行は、その被裏書人部分を自ら抹消している。このような被裏書人部分のみの抹消は、その裏書欄全体の抹消と考えられる。そうして、右抹消後手形受取人たる訴外米山工業株式会社は裏書をしておらず、突然訴外朱趙敏が白地裏書をしている。この事実によれば、受取人と第一裏書人との間に裏書の連続が中断されており、従つて原告は本件手形の適法な所持人とみなされず、手形の正当な権利者ではない。

と謂うのである。

証拠<省略>

そこで、本訴請求の当否について考えるに、原告の請求原因事実中被告が本件約束手形を振出したことおよび原告が本件手形を満期に支払場所に支払のため呈示したが、その支払を拒絶されたことは、被告の自白するところである。そうして、甲第一号証の一の表面と裏面の各記載および弁論の全趣旨によれば、本件約束手形の裏書が形式上連続しており、原告がその所持人である事実を認めることができる。この認定を左右する証拠はない。なお、本件手形の第一裏書欄のように、一旦記名式裏書のなされた後に被裏書人の名称のみが抹消された場合これを如何にみるか。この点については、被告代理人のような見解を採る説がないわけではない。しかし、当裁判所は、この考え方にはくみしない。抹消された被裏書人欄は、その抹消が権限ある者によつてなされたかどうかを問わず(この抹消が裏書人によつてなされまたはその同意を得てなされたかどうかを問うべきであるとの有力な説もある。)裏書の連続という関係では常に記載のないものとみなされるべきであり、従つて本件手形の第一裏書欄には白地式裏書の記載がなされているものとみるのが相当である。そうだとすれば、右手形の受取人および各裏書人との間には何ら裏書の連続の中断はなく、裏書は形式上連続しているものというべきである。この点に関する被告代理人の所論は理由がない。

以上の各事実によれば、原告の本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言について同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 逢坂修造)

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